これまで開催されてきたイベントでは、2Dデザイン部門しか無かったのですが、今年から3Dデザイン部門と、モーションデザイン部門が新しく増設され、 Cut&Paste2009は過去最大の規模となっています。大会(予選)はロサンゼルス(2/21)、サンフランシスコ(2/28)、ポートランド(3/7)、ボストン (3/14)、ニューヨーク(3/21)、トロント(3/28)、シカゴ(4/4)、アムステルダム(4/2)、ロンドン(4/4)、 ベルリン(4/18)、バルセロナ(4/25)、ミラノ(5/9)、香港(5/15)、上海(5/23)、東京(5/30)、シドニー(6/6)、の世界16都市で開催され、2Dデザイン部門、 3Dデザイン部門、モーションデザイン部門において各1名の優勝者が選ばれ、6月20日に予定されているニューヨークの世界大会への参加権を得ることができます。
ということで、2009年5月30日(土)、渋谷WOMBで開催されたCut&Paste2009アジア地区東京大会に行ってきました。ちなみに、もちろんトーナメント参加ではなくて、新しくできた3Dデザイン部門にプレイヤーとして参加するスタジオミーツ代表でジニアスアキバメンバーでもあるMAHIRO氏の付き添いです。
実は不安材料は他にもありました。Cut&Pasteの東京大会は、部門増設という新しい要素に運営側が激しく機動力を削がれていたらしく、公式なルールは、なんと前日まで通達されていなかったという経緯がありました。また、作品は与えられたテーマに沿って制作されますが、これも2日前にメールで告知されるという状況。このテーマ告知がされた28日に、一応作戦会議をしよう、ということで二人でブレストをやりましたが、翌日、MAHIRO氏は「他の参加者が必死に悩んでいるとすれば悩み甲斐もあるが、予選の状況を鑑みるに、それほど対して悩んでいないと思われる。そんな状況の中、俺が悩むのは徹底的におかしい。」と言い出し、作戦立案を放棄。いや、一応考えた方がいいのでは、という進言にも「おまえはブレストをやろうと言いながら、途中で寝てしまった。そんな奴の言うことは断固として聞けない。」と怒りだす始末。そんな折での解像度ネタだったので、この調子で行くとMAHIRO氏は途中で激怒して家に帰る可能性も捨てきれないなあ、とぼんやり思った次第。
ここでまた問題が発生します。新設部門ということもあって運営側は手探り状態で環境作りを行っていたようです。すべての参加者からも要望を聞き、公平で安定したシステムが組まれるハズでした。MAHIRO氏はMAXという3Dソフトウェアで参戦する旨を運営側に伝えてあり、また、「絶対に日本語版を入れておくように。」という要望も再三に渡って伝えていたのですが、Windows機に入れられていたのはバージョンも異なる英語版ということが直前になって判明。MAHIRO氏は「英語爆発しろ。俺は今後絶対に英語は喋らん。」とブツブツ言いつつ、開始を待つこととなりました。後で聞いたところ、英語版ソフトはご丁寧にプルダウンメニュー等もアルファベット順に並んでおり、作業は常に項目を探しながら行ったそうです。adobe製品のフルバージョンアップに悩んだ方や、初めてVistaに触ったときの元XPユーザーはその苛酷な状況が容易に理解できると思います。
17:30頃には観客もそこそこ入り、多少時間が押し気味でイベントが始まりました。3Dデザイン部門はファーストバトルとなります。プレイヤーは3名。他の方のこともいろいろ書きたいのですが、ここでは敢えて書きません。第一線のテーマは「Virus(ウィルス)」。前日ブレスト時に、MAHIRO氏が持ち出してきたアイデアに不安を感じていた僕は、もっと別のものを考えようと言っていたのですが、つけ麺を食べながら「もうアレで行くことに決めている。」と断言されたので見守ることにしました。
終了5秒前から観客と共に秒読みが始まります。その直前、MAHIRO氏の隣のプレイヤーのマシンがクラッシュ。もう一人のプレイヤーはまだレンダリング作業に移ることができないまま。MAHIRO氏の落書きはようやく3秒前に終了し、作品が画面に映し出されました。
まあ、とりあえず、第一戦は無事終了です。
控え席に戻ってきたMAHIRO氏に、レンダリングの最後に絶対に不必要と思われるブラー効果が入って作品がぼやけた感じになったので、あれはやめた方がいい、と進言したところ、「俺はアートが嫌いなんだと言っただろう。部下にも仕事を教えるとき、絶対にアート作品を作ろうと思うな、と教えている。今回おまえはこれがアートバトルだと言った。あのブラーをかけることであれは俺の嫌いなアートになった。それのどこが悪い。」と激昂。ここで僕は、わかったわかった、でも次はやらないよね?、という余計なことを言ってしまいました。案の定、MAHIRO氏はニヤリと笑いながら、「次も絶対やる。」と断言。溜息。
セカンドバトルのテーマは、「Descent from Heaven(降臨)」です。開始直後、MAHIRO氏の画面には惑星の地面っぽいテクスチャマトリックスが表示されました。その後約10分は同じ画面が続き、何の作業をしているか全然わからない状態。どうしたのか、とハラハラしながら見ていると、怒りの形相のMAHIRO氏が挙手してスタッフを呼ぼうとしています。マシントラブルでもあったのかな、と心配していると、すぐ近くにいたイベントの最高責任者がMAHIRO氏に近づきます。この人は英語しか喋らないということをMAHIRO氏は事前に知っていたので、英語が嫌いなMAHIRO氏は「おまえじゃない。英語はあっちへ行け。日本語を呼べ。」と日本語で怒鳴りつけました。
どうやら、英語のメニュー項目に嫌気がさし、やろうとしている作業ができないようです。日本語がわかるスタッフに「メニュー項目を一瞬で日本語に全部変えろ今変えろすぐ変えろ」と無理難題をふっかけています。スタッフがそれはフェアじゃない、というようなことを言ってしまったらしく、MAHIRO氏の怒りは頂点に達しました。「あれだけ日本語バージョンを入れておけと言ったのにお前らは一体何を考えているのか。それがアートか。ここは治外法権か。俺はこれから3D業界の頂点に立つ人間である。その暁にはお前らが業界に存在できなくすることも意のままだ。これ以上俺を怒らせるな。」と叫び、巨大スクリーンが設置されている支柱を鷲掴みにして崩壊させようとしだしたので、慌ててスタッフが制止。「Autodeskの人間を呼んで来い。絶対に来ているはずだ。今呼べすぐ呼べ。」とMAHIRO氏が絶叫したので、慌ててAutodeskの一番偉い人がステージに上げられました。そんなに騒いだにも関わらず、ヒアリングは一瞬で終了。MAHIRO氏は何事も無かったかのように作業を続け、繰り返し執拗に開閉する作業ウィンドウが画面に映し出され続けました。
怯えたMCが小さい声で10分前コール。それから数分が経過してもMAHIRO氏の画面には変化がありません。15分が過ぎたあたりで、地面のようなテクスチャマトリックスに劇的な変化が訪れます。それまで平面だったテクスチャの中央がいきなり崩壊し、地面が割れ、土砂が飛び散り、ぽっかりと巨大な穴が開きました。呆気にとられていると、MAHIRO氏は穴の上に何かの作業点を複数配置し、微調整を始めているようです。
後にMAHIRO氏に聞いたところ、やっぱり第二戦でも時間が余ったので、DJの音楽に合わせて作業ウィンドウの開閉をしていた、とのこと。執拗に開閉する作業ウィンドウはそれだったようです。それも飽きて、もう作業を終わらそうと思ったのだけれど普通に終わっても面白くないので、どうせなら終了直前に作品を完成させようとあまり意味のない作業を繰り返していたそうです。
第二戦終了後、すぐに集計がされ、優勝者発表のときにはMAHIRO氏の名前が呼ばれました。
大会数終了後、一緒に晩御飯を食べていると、そこで僕は驚愕の事実を聞くことになりました。第二戦の、直前に作品が完成する演出は当然意図的に仕掛けたものだったのですが、そこで使われていた地面が割れるとか稲妻が最後に表示される、というテクニックは、ブレスト中に僕が寝てしまった後、一人でソフトウェアを弄っていて、初めて見つけた機能を組み合わせて表現したそうです。
ここまで来ると異常です。ニューヨーク世界大会に参加するとしたら、そこでも相当奇抜なことをやると思われ、今から楽しみだなあ、と、渋谷の不二家で「何故カレーライスより先にパフェを持ってくるのか。店長を呼べ。」と店員を怒鳴るMAHIRO氏を見ながら、僕はぼんやりと考えていました。
ああ、そうそう。六本木のアフターパーティーでは、某学校の校長先生から、講師やってみないか、と誘われていましたよ。既に仙台と東京の専門学校で講師もしているMAHIRO氏。こういう先生が教えているのであれば、今後、大量にキワモノクリエイターとか排出されそうです。楽しみですね。
